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その他の肛門疾患
肛門疾病は痔だけではありません。似た症状の病気も多いので、診察を受けて適切な治療を受けましょう。
血栓性外痔核
外痔核という名前ではありますが、どちらかというと外傷に近い病気です。肛門に炎症が起きて小さな血栓ができ、それによって痛みや腫れが起こります。いぼ痔よりも痛みが強いケースがあります。肛門の血液循環異常が原因だと考えられており、アルコール摂取や運動、排便時のいきみなどで起こります。
血栓を取り除く簡単な処置で炎症が改善し、痛みがなくなります。日帰り手術が可能です。
直腸脱
直腸が肛門から脱出してしまう病気ですが、診察時に脱出していない場合もあり、痔核と誤って診断されるケースもあります。高齢になって直腸の固定が弱くなったり、肛門の筋力が低下することが原因です。直腸の全層が出てしまう場合と、粘膜部分のみが脱出する場合があり、どちらも薬などでは完治しないため手術が必要です。
全身麻酔が可能な場合には、腹腔鏡下直腸固定術という直腸を腹部の壁に固定する手術を行いますが、全身麻酔にリスクがある場合には別の手術で対応します。直腸脱手術は、日帰り手術が可能な場合もありますが、入院が必要な場合もあります。
肛門ポリープ
痔と併発することもある肛門ポリープは、直腸と肛門の境である歯状線にある肛門乳頭が大きくなってしまったものですが、大腸ポリープと違いがんになる可能性はありません。ただし、手術でしか完治しないため、肛門から飛び出るほどのサイズであれば切除が必要になります。肛門ポリープ切除は、日帰り手術が可能です。
肛門周囲皮膚炎
腸から分泌された粘液による肛門周囲の皮膚に生じる炎症で、主な症状は痒みです。痔核や痔ろうなどで粘液が肛門について発症する場合や、カンジダというカビの一種の繁殖により発症することもあります。肛門周囲皮膚炎は、石鹸や洗剤の刺激、下着との接触、掻き過ぎによって悪化するケースが多く見られます。
治療では、粘液を洗い落として清潔を保ち、その上でステロイドの軟膏を塗ればほとんどの症状が改善します。肛門の病気が原因となっている場合には、そちらの治療も必要です。
膿皮症
肛門周辺にはアポクリン汗腺があり、ここに細菌が繁殖することで皮下に膿がたまります。これを膿皮症と呼びます。痔ろうによる肛門周囲膿瘍に似ていますが、しっかり診察すると肛門内へ続く硬くなった組織がないことで膿皮症であることがわかります。ただし、痔ろうを併発する場合もありますので注意が必要です。皮脂の分泌が盛んな若い男性に多い病気で、それ以外の方はほとんどかかりません。
膿皮症は放置しておくとおしりの皮膚が広範囲に化膿して硬くなり、座るのも困難になる場合があります。
お薬で治すことができないため、化膿している領域を完全に取り除く膿皮切除術の手術が必要になります。広範囲に発生していたり多発している場合には、手術を受けても再発する可能性があります。膿皮症治療は、日帰り手術が可能な場合もあります。
毛巣洞
皮膚の下にもぐりこんだ毛に細菌が繁殖して膿がたまります。初期症状では膿や硬いしこりを感じる場合があります。膿がたまっている場合には、切開して膿を出す応急処置を行って、後日、化膿している袋ごと切除して縫合する必要がありますが再発の可能性は低くなっています。この手術は日帰り可能です。
尖圭コンジローマ
HPV(ヒトパピローマウィルス)の接触感染が原因となり、肛門周囲に小さくてやわらかい「いぼ」がたくさんできます。性器にいぼができる場合もあります。感染経路が不明なケースもありますが、ほとんどが性的接触によって感染しますのでパートナーも診療を受ける必要があります。尖圭(せんけい)コンジローマにかかっているとHIV(エイズウィルス)に感染している可能性が高くなることがわかっています。念のため、HIVの検査も受けましょう。
治療は肛門内外にできたコンジローマのいぼを完全に切除することですが、数が多いと再発率も高くなります。また、体内にウイルスが残っていると再発率が高いため、何度かの追加手術が必要になるケースもあります。この切除手術は日帰りで受けることが可能です。